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獣の仕業のしわざ

劇団獣の仕業のブログです。 日々の思うこと、 稽古場日誌など。

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ヴェニスの商人本番直前短期集中連載◆出演俳優インタビューその5:雑賀玲衣


「結構アタシ妄想癖が激しいっていうか…」


 立夏です。
 本番直前短期集中連載として始めた出演者インタビュー、今回でいよいよ最終回となりました。
 以前は団員が客演陣を紹介するスタイルだったのですが私もその輪に入りたいなあと言う不純な動機も実はちょっと否定できないこの企画、実際に話を聞いてみるとインタビューと言う体を借りていつもは聞けないようなことが聞けてしまったり、「実はそんなこと考えていたのか」と意外な一面があったりして、私個人としても沢山のキッカケがありました。

 ラストを飾る雑賀玲衣はすでに獣ではおなじみでファンの多い女優さんですが、実は団員になったのは2011年から。普段あまり自分の話をしない彼女なので、私としてもインタビューを楽しみにしていました。気が付けば過去最長インタビューに!理由は私が喋りすぎたからです!(これでもカットしてるんですが…)

 入団したときの思い出話も語りつつ、今回の役どころについても聞きました。どうぞ!


# 以前のバックナンバーはこちらです。併せてご覧頂ければ幸いです。
第一弾:小林龍二
第二弾:きえる
第三弾:藤長由佳
第四弾:凛子


◆ 共演者がどういう反応を自分に対してしてくれるか?そこから自分の役が立ち上がっていくというスタンス

インタビュアー立夏(以下省略):
─ あの、今回は初めての男役※ということですけれども、その辺りどうすか?

※ 雑賀は今回男役に挑戦します。その他の配役発表はこちらから!
→ ◆本番直前!◆ヴェニスの商人登場人物・配役紹介



雑賀玲衣(以下:雑賀) どうすか?(笑)

─ ああ、ちょっとザックリしすぎてる?

雑賀 大丈夫です!(笑顔で)でも特に今迄と「役に対して」と言う部分で…「男役だから」意識して換えている部分は、うん、ないですね。今迄通りやってます。

─ じゃあ今迄と役に対する向き合い方としては変わっていないと言うことかな。あの、じゃあちゅん(雑賀のあだ名です。以下全部「ちゅん」です)が役作り…いや、「脚本に取り組むとき」に個人的に心がけていることとかありますか? 「こういうことは大事にしている」とか、反対に「こういう部分はあまり気にしていない」とか、そういうような。

雑賀 あんまり、自分一人で脚本を読み込んできたりとか、一人稽古とかは、やってないです。

─ あっ、そうなんだ!

雑賀 そうなんです。(舞踏表現箇所の)振りとか動きが決まったときには自宅で稽古や確認をすることは良くあるんですが、まだそういうのが全然決まってない役作りの段階の時にはひとりで脚本を読み込んだりって言うのがなくって。稽古の場に来て、相手(の役者)がどういう反応を返してくるのかな・って言うところから作っていくようにしています。



─ 稽古場で出来上がっていくモノの方が重要、って言う考え方で正しいかな?

雑賀 そうですね。もうほんと、稽古場でばっかり。

─ 今の聞いてちゅんに対して思ったのは、ちゅんは稽古の一番最初の読み合わせの時が凄くこう… フラットというか… プレーンだよね。

雑賀 そうですね。

─ それは今の話を聞いてて「あ、確かにそうだな」と思ったんだよね。なんかこう…なんだろう。その…、初読み合わせの前に私が(役者に)脚本を渡すとするじゃない? そうすると(初読み合わせの時に)何らかの「キャラクター」であるとかもしくは口調であるとかがもうガッチリ決まってる俳優さんって、自分のところでも他の座組でも見たことがあるのね。決まっていることは全く悪いことではないんだけど、とにかくちゅんはそれの反対だよね。もうちょっとあってもいいだろう(笑)ってくらい「持ってきた」という感じがない、そういえば。それはなんだろう? 何か意図があったりする?

雑賀 やっぱり…、何だろう…

─ 敢えてしないようにしている と言った方が近いのかしら?

雑賀 それはあるかもしれないです。結構アタシ妄想癖が激しいっていうか…、

─ あはは、そうなの。

雑賀 元々自分勝手って言うか、自分本位な演技に走りがちなんですよ。エチュードとかもだから、凄く苦手なんですけども…。だから自分だけで読み込んで役作りして「こういう『読み方』にしよう」とか事前に決めてきちゃうと本当に「自分ひとりで作りました」ってものができてしまう気がして。で、自分だけが楽しいものになってしまう。でもそれって違うじゃないですか。だからそこは、甘えてますね、獣の皆さんに。みんながどういう反応を自分に対してしてくれるのかな? って所から自分の役が立ち上がっていくというスタンスです。

◆「役作り」と言う言葉について

─ 今「甘え」と言う単語が出てきたけども、私は聞いてた感じ甘えだとは思わなくて。例えばさ、自分でガッチリ役を作って来ちゃえばある意味安心はするじゃない。「これをやっていればいい」って言う、

雑賀 そうですね。

─ 役作りをする安心にはネガティブな面もあると思うんだよ。反対に、ちゅんみたいに何も作らない状態で稽古場に立つと言うのはそういう考え方の作り方の視点から見れば、凄く勇気が必要なのかもしれないよ。それは元々雑賀玲衣がそういう指向性なのかもしれないし、もしくは獣がどちらかと言うと稽古場で出来たものを重要視しているから、(雑賀が)それに合わせてそうなったのかもしれない。昔からそうなの? 昔って言うのはうちに入る前の、大学で芝居をしていたときは?

雑賀 結構大学のサークルでやってたときはキャラが立ってる役、ガチガチに性格が固められる役が多かったので、そうなってくると自分で家で(役を)作ってきちゃう…

─ 求められるしね。

雑賀 そうですね。分かりやすい、明解な、感じの、劇が、…多かったので。

─ ウチは分かりにくい、不明確な、感じの、劇ですけども(笑)

雑賀 人と人とのやりとりとか台詞だけじゃなくて、大きな動きや身体表現を使って、五感を使って見るモノ、獣の仕業の舞台のことを私はそう思っているのでだから台詞だけで読み込んでキャラ作りのようなことは獣ではできないと思っています。

─ 一般的に言われている「役作り」はウチではある時には不必要だったり、またある時には何かの妨げになってしまうことが何度かあったよね。ちゅんに限らず。

雑賀 ありましたねぇ…。

─ パッと最初の一言だけで人となりが分かってしまう芝居をすると、何だろう、「分かっちゃう」のって私少し苦手なのかも知れない…。芝居始まって三分くらい立って「ああ、この人ってこういう人か」って分かっちゃった瞬間にお客さんはもうその登場人物のことを見ないんじゃないかって私信じているところがあって。

雑賀 ああ、そうだ。私初めて(獣の仕業の)オーディションを受けに来たときに、例えば「腕を組んでる仕草でキャラクターを表そうとしてるんじゃないか」って立夏さんから言われました。

─ え!! あ、わー、そんなことを! 言ってました!?

雑賀 はい(微笑み)。それで第二回公演でご一緒させて貰ったときに言われたのは「自分のやりたくないことはやらないで」とも言われました。それは今も良く覚えています。

─ ああ、それは言うと思う。言ったと思う。

雑賀 今もそれは大切にしています。

─ ああああ、ありがとうございます…! 今は何だろう、今は「そう言う『振り』をしないで」って言葉に言い換えているかもしれない。

◆ 獣と初めてあったときの既存メンバーの当時の年齢になった

─ 意外と言うことは変わってないっすね。成長してなくてごめんです。

雑賀 最初に私と会ったとき立夏さんいくつですか? 私19歳だったので…

─ じゃあ私が24歳かな。ってことは今のちゅんの年だ!

雑賀 そうですよ~!! 何かそれを最近気付いて!

─ 恥ずかしいですねぇ。…頑張ります!

雑賀 へへへ。

◆ 世界の終わりに何を食べるかを妄想する

─ ちなみにさっき妄想が激しいって言ってたけど、今迄でした激し目の妄想はなんですか? あ…差し支えのないヤツでいいので。

雑賀 私、自分が入っている妄想ってしないんですよ。それこそ「獣のメンバーがこういう場所に立たされたらどう行動するだろう」とか「世界の終わりに何を食べるか」とか…

─ それは… 捗るねえ(笑)。役作りなんかそれこそ向いてそうな趣味なのにね。裏設定を考えたりとか。

雑賀 そうですかねえ? ああ、立夏さんが昔「群集~」のときに私の役の昔話※をTwitterで書いたじゃないですか。あれは捗りました。

─ 本番直前に勝手にああいう裏設定をね、私がブチこむんだよね(笑)。しかし裏設定ってのも良く分かってなくてさあ、結局裏は裏だから、芝居の精度以前にそもそもお客様には正確に分からないじゃない。芝居の物語の中にそれを補強する要素がないから「裏」な訳でね。でもあれかな、役者が自分の芝居をより良く駆動していくために必要なのかな? あくまで裏だよね。

雑賀 私は裏設定があると自分の中に落とし込めるっていうか。

─ 自分のエンジンになるような感じなのかしら。

雑賀 (作品を)良く消化できる気がします。

※ インタビュー中の「昔話」はこちら
「即興小説深夜特急深夜特急「群集と怪獣と選ばれなかった人生の為の歌・のうた」
2013年9月28日(土) ~ 2013年9月29日(日) 荻窪小劇場にて上演された
獣の仕業「群集と怪獣と選ばれなかった人生の為の歌」の上演直前企画として
2013年9月25日(水)~9月27日(金)の三日間 24:00~25:00の一時間限定で
獣の仕業脚本演出の立夏が即興で散文をTwitterに連続投稿した「深夜特急」のまとめです。

◆ 小学校の時、女子の喧嘩チャンピオンだった

─ (ちょうど稽古帰りだったので周りにいる他の役者に)誰かちゅんのインタビュー入りたい人いる?小林さん以外で。小林さん登場しすぎてるから! 他の人のインタビューに!

小林 ・・・。



凛子 いいじゃーん。みんなでお喋りしようよーぅ。

─ 何かちゅんに聞きたいことある?

きえる 普段何食べて生きているのですか。

凛子 きえるはちゅんの生態系を知りたいんだね!

雑賀 私朝ご飯いっぱい食べるんですよ。朝ガッツリ食べて、夜もいっぱい食べて、昼はホソボソと生きています。

きえる 凄く可愛いモノを食べてるイメージがあるんです。

雑賀 かわいいもの?

きえる ピンクの…

─ マカロン?

きえる 着色料的な…

─ アメリカ人だと思ってるの?(笑)

雑賀 最近は内臓系と刺激物が好きです。

全員 へええええ~。

─ 何か結構いつも決まった好きな食べ物があって、稽古場では常にそれを食べているイメージが。

凛子 ちゅんの「好き」って明確だよね。洋服とかもさ、ちゅんが好きそうな服を、ちゅんが着てる。

雑賀 今日は地味ですよ!

─ …ええっ!?

雑賀 …ええっ!?

─ これは地味じゃないんじゃない・・・・・・?


「今日は地味です!」と言っていたインタビュー当日の私服はこちら。皆様、どうですか…?

◆ 小学生の時、女子の喧嘩チャンピオンだった

凛子 ちゅんのあだ名の「ちゅん」って誰が付けたの?

雑賀 通り名です。アタシ小学校の時に女子の喧嘩チャンピオンで、女子で一番喧嘩が強かったんですよ。それでストリートファイターってゲームがあったじゃないですか、そのゲームのキャラクターの「春麗(チュンリー)」から…

凛子 ええ? そうなの!?

雑賀 小学校はそれでずっと「チュンリー」って呼ばれてて、中学高校はもっと素敵な名前でしたよ。「レディー」って呼ばれてました。高校の時に「レベッカ」と言う作品のデンバース婦人を演じていたのでそれからずっと…

─ …アタシそれ見たことある気がする。

雑賀 獣のオーディションでデンバース婦人やりましたもん。

─ ああああ! そうだよね!


確かに強そうです。


─ 最後に小林さん何かありますか? あの、アタシが「出過ぎだ」とか言ったからずっと我慢してくれてたと思うんだけど…

小林 何で本番だけあんなに声デカいんですか!!

雑賀 (笑)それは私自分では意識してないです! 本番だけ大きくしようとか考えていないです!

小林 ほおおお~…。

─ じゃあそんな感じで、最後にお客様に一言メッセージを!

雑賀 pitという洞窟で皆様おひとりおひとりと向き合い、語り合うことができれば、と。ろうそくを灯してお待ちしております。


─ 雑賀さん、ありがとうございました。インタビュー連載はこれで最終回です。最後までお読み下さった皆様ありがとうございました。楽しんで頂けましたでしょうか?


「ろうそくを灯してお待ちしております」


 # ちなみに最後のインタビューに藤長さんがいないのは藤長さんだけ電車が逆方向だったからです…。


獣の仕業第九回公演

「ヴェニスの商人」[Kingdom Come]
チケット予約受付中!!

会場:pit北/区域(最寄り駅:JR京浜東北線、東京メトロ南北線「王子」駅)
◆公演特設ページはこちら◆

2014年11月
1日(土)14:00/19:00
2日(日)14:00/19:00
3日(祝)13:00/18:00

※ 11月3日のみ各開演時間が一時間早いのでご注意下さい。
※ 上演時間は80~85分を予定しております。

携帯からの予約はこちらをクリック!























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◆本番直前!◆ヴェニスの商人登場人物・配役紹介


「俺の役は何だい?」

 獣の仕業第九回公演「ヴェニスの商人」[Kingdom Come] いよいよ今週が本番となりました!

 そこでご予約頂いた皆様には予習として、ご予約これからの方には「どんな物語なのかな?」と言うのを知って頂く機会としてささやかながら「登場人物紹介・配役発表」をすることとしました。

 その登場人物を担う俳優を写真付きで紹介しつつ、登場人物の簡単な説明をつけさせていただきます。まずは登場人物紹介から。

※なお、配役発表とともに役の設定なども簡単に紹介しますので
 ・登場人物
 ・序盤のストーリー
 についてのネタバレ要素を含みます。物語の序盤の内容またはチラシから推察できる内容のみを記載しておりますが、一切の前情報なしでご観劇されたい方はここでUターン!推奨です。






 それでは登場人物紹介です。

 ここでまずご説明しなければならないのは今回の「ヴェニスの商人」では担当する俳優が固定していない or 一人の人間を複数で演じる登場人物が存在します。(以前このブログでも紹介した「一人二役」そして「二人/三人一役」の仕組みが採用されている作品です)。

 その為これから登場人物をひとりひとり写真で紹介していくのですが、写真には二人以上の俳優が写っている場合があります。
 その時には
「この登場人物はふたりの俳優が代わる代わる演じるんだろうな」
「全員でひとりの人間を表現するのかな?」
 などと想像して頂けたらと思います。


 それでは緒言はこの辺りにして、ご紹介します!

シャイロック/SHYLOCK

富のあるユダヤ人、ジェシカの父親
「アントニオ。貴方は私を、邪教信者だと、人殺しの犬だと呼んで、この上着へ唾を吐きかけなさった。私が私の子羊を利用した事を不埒だと言って。じゃあ今頃になって、私に用があるんだね。私は何と返事をしよう…。」

 当時のヴェニスでは他の地域に比べユダヤ人にも権利が与えられていたため、たくさんのユダヤ人がヴェニスに移住してきていました。
 しかしユダヤ人は劣った人種であるとされその権利には一定の制限がありました。代表的なものとしては隔離区(ゲットー)への居住をすることや、不動産などの固定資産を持つことが禁止されていることなどです。その為、当時は生計を立てるために金貸し(今で言う金融業です)をしているユダヤ人が数多く存在しました。
 金融業というと今で言えばエリート・憧れの職業・そんなイメージですが、当時は「人に金を貸し付けて余分に返して貰う狡猾な仕事」と認識され、まして世の中に貢献する仕事とは思われていませんでした。
 シャイロックは利息で富を得てたくさんの財産を持っていますが、一方でイタリア人のアントニオには高利貸しと罵られています。


アントニオ/ANTONIO

ヴェニスで貿易商を営む商人
「いいですかバッサニオ…。私が貴方の為に全力を尽くすのをお疑いになさるのは、ありたけの私の財産を浪費なさるよりも私に対する侮辱です。ですからただどうすればいいかをいいなさい。」

 原作の「ヴェニスの商人/The Merchant of Venice」はこのアントニオのことです。
 商人/Merchant はお店を営む人ではなく船で商品を運んで輸入/輸出をする「貿易商」のことを指しています。彼はこの仕事で多くの富を築き上げました。
 また、その富のため金銭の上で頼られることが多く、友人や頼まれた人に金を貸すことが多いようです。その時無利子で貸すことを信条としているためシャイロックの商売の邪魔になっています。彼もまた多くのヴェニス市民と同じようにユダヤ人を劣った人種と考えていて、高利で金を貸し付けるシャイロックには特に、特別の思いがあるようです。
 そんな彼が親友のバッサニオのために、「自分の肉」を抵当に入れてシャイロックに金を借りに行く── これがこの物語の始まりを告げます。


バッサニオ/BASSANIO

アントニオの友人、ポーシャの求婚者
「もし私に財産があって、他の手合いと同等に競争できるなら成功は、大丈夫だと、この心が確信しているのです」

 先に述べたアントニオの親友であるバッサニオは、ある女性に恋をしました。ベルモントの屋敷に住む女主人ポーシャです。彼は以前金の遣いが激しいために財産をなくしてしまいました。そのためアントニオにも度々少額の金を借りているようです。
 そこで彼は言います。「けれど貴方の親切を信ずるからして、敢えて何もかも、…負債を消す為の計画を何もかも打ち明けるんです」と。
 ポーシャに求婚するための支度金を、バッサニオはアントニオにねだります。しかしアントニオは貿易商、財産である積荷はちょうど海の上にありました。アントニオに金を貸しそうな男を訪ねてみろと助言され、バッサニオはシャイロックの家の扉を叩くのでした…。


ポーシャ/PORTIA

富のある若き女主人
「『選ぶ』ということば。 ねえ、ネリッサ。私は恋人を一人も選ぶこともできない…。そして一人も、拒むこともできない?」

 バッサニオが求婚しようとする姫君ポーシャは、父親が亡くなったため若くして屋敷の女主人となりました。莫大な資産のためかその美しさのためか、沢山の男が連日彼女の屋敷にやってきては求婚を迫ります。
 父親は亡くなる前に遺言を残しました。「私が死んだら三つの箱を用意する。そこの箱の中に、金の箱にはがらんの髑髏を、銀の箱には盲目の道化を、そして最後の鉛の箱に可愛いお前の肖像を忍ばせておく。お前の肖像を選んだものと結婚しなさい。」
 ポーシャは思います。今私に手を伸ばす殿方達は何に恋をしているのだろうか? 私の財産なのか、私の美貌なのか、それとも? ポーシャは選択することについて考えます。


ランスロット/LAUNCELOT GOBBO

シャイロックに使える召使い
「シャイロックの旦那、俺はもう、ユダヤの召使いはごめんです!」

 ユダヤ人の一家シャイロック、ジェシカの家で召使いとして働いているランスロット。
 以前は上手く行っていて特にジェシカとはまるで友達同士のような関係を築いていたのですが、シャイロックと言い争いになったことから家を出て行ってしまいます。「きっと俺の心は、ランスロット・ゴッホーの心は、俺にかれこれ言いやしないだろう。俺がシャイロックの旦那を見捨てたって…」彼は自分にそう言い聞かせ、バッサニオの所の召使いなる約束をバッサニオと取り付けます。
 その後も、シャイロックの家に行ってバッサニオの夕食に招待しに行ったり、ジェシカの手紙をロレンゾに届けたりと、ジェシカの駆け落ちを手引きするために奔走します。
 彼はシャイロックの家の関係を破壊したいのでしょうか? そこにはまた違った意味があるようです。
 

ネリッサ/NERISSA

ポーシャの侍女
「ハァ、ポーシャお嬢様のお父様は生前、大変立派な方でいらっしゃいました…」

 ポーシャの屋敷に仕える侍女ネリッサ。高齢の女性です。獣の仕業版では一瞬だけ登場します。お見逃しなく!


公爵/DUKE OF VENICE

法廷の裁判長を務めるヴェニスの公爵
「シャイロック、これでよろしいか。どうだ!」

 当時何か諍いが起きて法廷の場で解決をしようとした際に、裁判長の役割としてその街で一番権威のある人物が判決を下すということがあったようです。
 シャイロックの法廷に立つ公爵は、シャイロックに命令を下します。「では閉廷だ、シャイロック、命令を聞きなさい」と。
 シャイロックはそれに対して控訴します。「聞いて下さい、皆さんどうか目を逸らさないで。教えてください、私は誰です!」
 この物語はシャイロックの「控訴」です。一度敗北した男が、もう一度あなたたちに問い合わせます。

ロレンゾ/LORENZO

ジェシカの恋人
「気をつけろジェシカ、夜の森には悪魔が隠れている。暗闇から悪魔は真実を手下に使うんだ、僅かの誠で引き込んで、深刻な結果で裏切るために!」

 その控訴裁判にロレンゾは証人喚問されませんでした。
 ロレンゾの証言の場では、登場人物の中の誰かが代理証言としてロレンゾの言葉を語ります。こちらは劇場でのお楽しみで・・・。



ジェシカ/JESSICA

シャイロックの娘、ロレンゾの恋人
「キリスト教徒の男ロレンゾが、シャイロックの娘ジェシカと恋に落ちて月夜に駆け落ちをする、私の反対弁論。1ポンドの約束も三つの箱も私は知らない、わたしは・あなたに・あいたい・ロレンゾ、」

 控訴したシャイロックに対して、反対弁論をする女。彼女はシャイロックの実の娘です。ユダヤ人であるがゆえに父親と同じ制限を受け、高利貸しの娘と罵られるジェシカ。
 彼女はキリスト教徒の男ロレンゾと恋仲になりました。
 そしてある時、決心します。「あの人とは血が繋がっている。でも、私とあの人の行いは親子じゃない」ランスロットに協力を仰ぎ、彼女は月夜の夜にロレンゾと駆け落ちをする計画を立てたジェシカ。
 そしてキリスト教徒に改宗し、夫と夫の神様に仕え、本当の自分に戻る、そう決めたのです。


 月明かりが差してきました。約束の時間。
 彼女は宝石箱を持って、煉瓦で封じられた窓を開け放ちます。



 最後までお読み下さりありがとうございました。

 最後に今回登板する俳優の顔と名前の紹介をさせてください。
 なるべく「いつも通り」「素の感じで」とお願いしているので先程の登場人物紹介の時の表情のギャップもオススメです。みんなゆるゆるです。

▲小林龍二


藤長由佳


きえる


雑賀玲衣


凛子


獣の仕業第九回公演

「ヴェニスの商人」[Kingdom Come]
チケット予約受付中!! 当日券もあります。

会場:pit北/区域(最寄り駅:JR京浜東北線、東京メトロ南北線「王子」駅)
◆公演特設ページはこちら◆

2014年11月
1日(土)14:00/19:00
2日(日)14:00/19:00
3日(祝)13:00/18:00

※ 11月3日のみ各開演時間が一時間早いのでご注意下さい。
※ 上演時間は80~85分を予定しております。

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「ヴェニスの商人」10/11,12・18,19 稽古場日誌 ~あるいは一枚の豊かな瑠璃色の布について~


ひとつずつ丁寧に測ります。芝居も、舞台も、同じです。


 立夏です。
 獣の仕業第九回公演「ヴェニスの商人」まであと2週間弱となりました。今週の稽古が土日の最終稽古です。改めて本番までの期間を俳優さんやスタッフさんと過ごしてくると、お客様に届くときの作品の手触りや質感がかなり明確になってきます。

 今回の作品、今迄の獣の中ではかなり異色の作品になるのではないでしょうか。
 今迄で最も静かで、最も丁寧で、そして、表面がとても冷たい。そして、中身がとてもあたたかい。

 代表としては、企画段階時点からある程度作品の雰囲気は想像していました。
 そして勿論、現時点でできているようなものに近いモノを作るつもりではいたのです。
 ですが、やはり稽古場で立ち上がってくるモノというのは、同じ質感でも、そこに掛かってくる重量が違うなあと思います。すべてにおいて想像よりも「大きい」ものができます(これは、私の想像力がまだまだだという意味でもあります)。

 「想像」という「物質」にも多少の重量は掛かると個人的には決めつけておりますが、生身の人間が立ち上がると、些細なことで、濡れて/乾いて/沈んで/浮かんでいく。
 稽古場で登場人物達のやりとりを積み重ねていく中で、こんなにも人と人との間の質感ってユラユラと変化しつづけているんだなあと思い知っています。


 質感 たとえば、
 
 ─ 綺麗な水の中を、すうっと泳いでいるような質感。
 ─ 有刺鉄線の中を藻掻き苦しみ進んでいかなければならないような質感。
 喩え方は様々ですが、「悲しみ」「痛み」は獣の仕業で良く取り扱われている質感です。これらを圧倒的な「熱量」と「スピード感」と共にお届けしてきたのが今迄の獣の仕業の作品作りです。
 


 今回新しい挑戦は、
 ─ 強い眠りと倦怠感が満ちて、ただ一筋の憎しみだけで覚醒しているような質感。
 ─ ゆったりと時が停止しているような中で、自分の背後で冷たいモノが動いているような質感。
 これらは多分、これまでの獣の仕業の公演では殆ど表現されなかった、表現されたとしても前面には出てこなかったような質感です。

 今迄作り上げてきた気持ちや熱量や速度は抑揚の中で残しながら、ベースの表現の仕方にはひんやりとしたものや気怠いものを多く取り入れています。

 その中で、「シャイロック」と言う男の情動をなるべく正確に、(つまり悲劇のヒーローにも寄せず、スーパースターにすることなく)描きたいと思っています。


 シャイロック、ユダヤの金貸しシャイロック、

 彼にはひとり、娘がいました。




 私達の目の前には今、一枚の豊かな瑠璃色の布があります。
 海のような、夜空のような、あるいは青い鳥のようなものです。

 布の質感を壊さないまま、その風を含んだ風合いを残したまま、ひとつのゆったりとしたドレスにしたい。

 稽古場は今、最終縫製段階です。

 皆様のご来場、お待ちしております。


獣の仕業第九回公演

「ヴェニスの商人」[Kingdom Come]
チケット予約受付中!!

会場:pit北/区域(最寄り駅:JR京浜東北線、東京メトロ南北線「王子」駅)
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2014年11月
1日(土)14:00/19:00
2日(日)14:00/19:00
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※ 11月3日のみ各開演時間が一時間早いのでご注意下さい。
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ヴェニスの商人本番直前短期集中連載◆出演俳優インタビューその4:凛子


「最近カレーも好きです」


 立夏です。
 「ヴェニスの商人出演俳優インタビュー」第四弾は 凛子。
 第六回公演「オセロ」[Othello the Shakespeare]からの登板となる凛子ですが、今どんな気持ちで芝居と向き合っているのでしょうか?
 …っと思ったら... どんどん話は凛子のペースに。なんでしょう、なんというか、私は凛子にはいつも敵いませんね。
 彼女をきちんとご紹介するのははじめてかも知れません。獣の仕業最強、凛子。うちの珍獣です。どうぞ。

# 芝居の話をしているバックナンバーはこちら。併せてご覧下さい。
第一弾:小林龍二
第二弾:きえる
第三弾:藤長由佳


◆ 役作りは「相手との関係性」


インタビュアー立夏(以下省略):

(凛子の前に座ってレコーダのスイッチを押す)

凛子 え? これもう始まってんの?

─ ううん。

凛子 はい、お願いします。

─ じゃあ、よろしくお願いします。ええと、前回「オセロ」以来の出演ですけれど、オセロの時と今回の時で芝居への取り組み的に違っているところとか、反対にここは一緒だなと思うことがあれば教えて下さい。

凛子 前回は男役…、で、今回は女役というか、「乙女」役だから。

─ なるほど。

凛子 (乙女役は)初めての役ですね。恋に恋する少女役。しかも彼女は初恋らしいので…「○○」の役がね…ふふふ。
※ ○○は役名なので今回の記事では伏せ字にします。配役発表は後日こちらのブログで致します。お楽しみに!!

─ 前回出演の「オセロ」の映像を自分で見たりしたんだけど、それを見ると凛子が今の稽古でやってる芝居とは随分演じ方がやっぱり違うなあということをこの間改めて思ったんですけれど


第六回公演「オセロ」[Othello the Shakespeare] で夜光(IAGO)役を演じる凛子(写真左端)


凛子 そうですかねえ。

─ あれ、意識してない? うん、見てるとね、すごく違いがあるんだけどね。凛子の中で役作りに対するコダワリとかってあるのかしら??

凛子 えー! ええっと、役作りはねえ… 相手役との関係性を深く考えていて、それから相手の思っていることとか、うーん、やっぱりバックグラウンド考えたりとか。その役の所属しているところの関係性かな、考えたりとか、うん。あとは17歳の○○(役名)がこの言葉をどんな気持ちで言ったんだろう? って、考えたりとか、ですかね!

◆ 最近、カレーも大好きです。

─ じゃあ好きな食べ物は!?

凛子 えっ、ええええ! いっぱいあるけどもー、…ハンバーグです。

─ OK、OK。ありがとうございます。

凛子 あっ、最近カレーも大好きです。

─ カレーって言っても色々あるけども? どんなカレーが好きですか。

凛子 えっとー、カレーは元々好きだったんですけど、あの、お茶の水にある「エチオピア」ってカレー屋さんのカレーが凄く美味しくて、それからカレーが大好きになりました!

─ なるほどー! ありがとうございます!そっか…。


稽古場では大体このお茶を飲んでいます。


凛子 すっごくおいしいんだよ!!

─ いっぱい食べちゃう?

凛子 いっぱい食べちゃうー! 具沢山だし…

─ 稽古場でもたくさんモノを食べている様子が目撃されている凛子さんだけれども、ははは…、ご飯が…ね、ホント大好きで…

凛子 ご飯大好きなんです~(うっとり)

─ ははは…。はあ…、ちょっとこれ食いしん坊キャラになっちゃうよこのインタビュー。

凛子 だめだよ!! 自重してるんだから、今回も恋する乙女だから頑張って可憐さを出そうとしてるんだから、それで痩せようとしたんだけど…。努力は報われず、増えました!

─ 本番までに(体重の)目標は…

凛子 言わないけど、体重は!

─ (笑)

凛子 でも本番までに5kgくらいは痩せたかったなあ。

─ えー、5kgも痩せたら体力なくなっちゃうじゃん。

凛子 だから肉を食いつつ。

─ なるほど。

凛子 痩せたかったけど、まあ無理でしょうね。

─ ふふふ。そうか…。期待してます。

凛子 痩せることに?

─ いやいやいや…。違うでしょ…。

◆ 今回の座組は少人数。全部みんなで考える。

─ 前回出演された「オセロ」の座組と、今回の(ヴェニスの商人の)メンバーを比較してみてどうですか? 雰囲気とかって違いますか?

凛子 うーん。前回は主役のオセロ役をしてた田澤さんを中心に、あとは緑眼玉の化け物をされてた倉垣さんとか、今より沢山人がいてワイワイしてたけど今回は少人数での芝居なので少数精鋭というか…。稽古中に物事を考えるのにも、凄い規模が小さいから(今回は)全員で考えてる。全体の構図とかも全員で考えるとか、行動するのも全員でとか…、

─  ああ、そういうのはあるかもね。

凛子 前回(オセロ)は人数が多かった分、シーンを考えるのもグループに分かれてたのを、今回は(分かれていないから)共通認識とかの意味で…いいんじゃないかなと。勿論その分、その人のシーンだと(稽古は全員に)付き合って貰うってことにもなっちゃうんだけど。そういうのが前回と違うと思う。

─ 確かに。





 以下は別日に凛子と小林さんと三人で打ち合わせ後にお話ししたので再びの小林龍二登場です。

◆ 「雑賀玲衣ならどうするだろう?」(凛子)

─ 反対に凛子がしたい話があれば聞きたいです。食べ物の話以外で。

凛子 うーん、えー、待って…。あ、二年振りに公演に参加して、やっぱり最初はなかなか体が動かなくて…「おああ~、動かねえ~」ってなりました。

─ 凛子の中でさ、理想とする俳優の状態ってあるんですか?

凛子 この間小林さんには話したんだけどね、今の役をやっていて、凄い「女性」っぽさ、そういうのを意識したときに、やっぱりちゅん(= 雑賀)がイメージにあって、……ただちゅんまで言っちゃうと「妖艶」になっちゃうから(笑)、今の自分がやっている役には違うと思うんだけど…。けど、女性らしい動きを意識したときに「ちゅんだったらどうするかな?」ってことを、無意識に考えたりしていたんだよね。ちゅんってウチらの中で女性の象徴だって思ってるから。

─ 小林さんは以前この話を聞いていたそうだけど、凛子の動きについてどう思いますか?

小林 そうねえ、でもちゅんの動きはちゅんの動きだし、凛子の動きは凛子の動きだし、

凛子 まあね、

小林 みんな、動きに特徴があるよね。団員もそうだし、今回参加のきえるも。なんか改めてそう思うよ今回。

─ 「特徴がある」って言うのは、小林さんの感覚だとどういう違いがあるんだろう?

小林 出せるものがみんなそれぞれ違うってことかな。なんていうか、色がそれぞれ違うような。凛子は黄色、ちゅんは紫、

凛子 ちゅんは敢えてピンクじゃないんだね。(注:雑賀さんは私服でショッキングピンクの服ばかり着るという特異性があります)

小林 藤長は薄い水色、きえるは・・・・

─ なんだろ。白か黒だよね。

小林 黒より白だと思う。確かに服はいつも黒だけど。俺は・・・、金?

凛子 金!?(笑)

─ グレーかな。色んな色が混じり合ってできた灰色、

凛子 一部濃い青とかね、緑とかね、

小林  油彩やってる人のパレットみたいな感じ?混じって、これ何色なの? っていう・・・。

─ ドブ的な(笑)。ドブ芝居。

小林 ドブ・・・。芝居はちょっとだけそうかも知れないけど、動きは…

─ 動きはエッジが強い。

小林 お。いい感じ。じゃあ赤?

─ うん、赤レンジャー的な。

凛子 ああ~。

─ やっぱこう主役っぽい。

凛子 泥臭さだよね。きれいなヤツじゃない。

◆ 「凛子はどっか掴まってヘロヘロしててほしい」(小林)

─ 凛子はふにゃふにゃなところが好きなんだよね。

小林 どっか掴まってヘロヘロってしているのが、「せかいでいちばんきれいなものに」とかの。

凛子 ああ、こないだいってたね!

小林 変に力が入ってないのが、いいんだよね。

─ うん、何かに掴まっていて欲しい。つかまりんこ。

凛子 自分はもっとね、キリっとやってるつもりなんだよ。ちょっとショックだね…。 それでさあ、こないだの通しの動画を見たときにさあ・・・、

(取り留めなくなってきたので、宴もたけなわではございますがこの辺りで!)

─ 凜子さん、では最後にお客様にメッセージをお願いします!

凛子 獣の仕業のヴェニスの商人を観ていただいた方の胸に、少しでも何か届けることができるようにがんばりますので、よろしくお願いします!


─ 凛子さん、ありがとうございました。次回のインタビューもお楽しみに。


「少しでも何か届けることができるようにがんばります!」



獣の仕業第九回公演

「ヴェニスの商人」[Kingdom Come]
チケット予約受付中!!

会場:pit北/区域(最寄り駅:JR京浜東北線、東京メトロ南北線「王子」駅)
◆公演特設ページはこちら◆

2014年11月
1日(土)14:00/19:00
2日(日)14:00/19:00
3日(祝)13:00/18:00

※ 11月3日のみ各開演時間が一時間早いのでご注意下さい。
※ 上演時間は80~85分を予定しております。

携帯からの予約はこちらをクリック!






ヴェニスの商人本番直前短期集中連載◆出演俳優インタビューその3:藤長由佳


「今回あまりやったことのない役どころに挑戦しています」


 立夏です。
 「ヴェニスの商人出演俳優インタビュー」第三弾は 藤長由佳。
 普段は言葉少なな彼女ですが、芝居と向き合うとき、それから普段の生活の中で一体どんなことを考えているのでしょうか? 第一弾第二弾とは打って変わって、二人きりの時に色々と聞いてみました。
 ぽつぽつと語る彼女の一言一言の中に、控えめで優しいのに心が強い、そんな人となりがにじみ出るようなインタビューになりました。

# あまり控えめではない第一弾と第二弾も併せてお読み下さい
第一弾:小林龍二
第二弾:きえる



◆ 稽古場での「感触」を大事にしたい。

インタビュアー立夏(以下省略):
─ 舞台の意気込みを教えて下さい。

藤長由佳(以下:藤長) 意気込みですか、そうですねえ、なんていうかなあ… 今迄あんまりやったことないところに挑戦しているので、そこをどう乗り越えていくか、というところで、目標にしたいと思います。

─ 今迄やったことないところと言うのは、今迄やったことない「役どころ」? ということですか?

藤長 うん。

─ なるほど。じゃあ由佳さんが、役作りをする上でルールみたいなモノとか、「こういう決まった手順でやっていく」ようなことって、あったりしますか?

藤長 うーん、役作りをする上でそうですね、割と文字情報から入ってしまうことが多いので、でも最近はそれじゃあいかんなと思って。…頭でっかちになってしまうので、なるべく壊すように壊すようにとはしています。

─ 「壊す」っていうのはその、(役作りで重要視するモノを)文字情報だけに頼らないようにしよう、と言う事かな?

藤長 そうですね。

─ 文字以外だとどんなものを頼りにしていくことになるんだろう?

藤長 まあ、なんだろう。周りの役者さんと作っていく上での「感触」ですかね。

─ 稽古場で気付いたことや、作ったモノを頼りにしていくと言うことかな。それでは、今回の一緒にやっている仲間の人達の個人的な「感触」ってどうですか?

藤長 小林さんや雑賀さん…一緒にずっとやってきている…

─ 常連さん?

藤長 常連さん(笑)。団員だからね。

─ そうね、そうよね。間違えた。

藤長 で、凛子も久し振りで(※第六回公演「オセロ」以来の登板)。そういう(団員の)人達と一緒にやっていくっていうところで勿論、うーん、安心感とはまた違うんだけどやっぱり一緒に積み上げてきたモノがあるって思うんです。

◆ きえるちゃんとはまるでずっと昔から一緒にやってきているような感じ

藤長 そんな中で…きえるちゃん、今回客演で来てくれたきえるちゃん。凄い新鮮なんだけど、それなのにずっと昔から一緒にやってきたような感覚があります。でもそれは、勿論きえるさん自身が(獣の仕業に)溶け込もうって努力してきてくれている結果であるだろうし、(獣の仕業との)相性が良いって言うのもあるだろうけれども、うん、きえるちゃんとやってる時って言うのはそんな、凄く不思議な気持ちになりますね。

─ 「昔から一緒にやってきてるみたい」って表現は凄く腑に落ちたかも。

藤長 そうなんですよ。

─ 彼女には作品作りの面では凄くリラックスさせて貰っているような面もある。分からないことはすぐ聞いてくれるし、だからこそ分かって貰ってるなと言うのがこちらも分かるから。あと個人的には「きえるが見てる手前頑張らないとな」と言うのが…凄くある(笑)。私はちょっと見栄っ張りなところがあるんだけど、由佳さんはどうですか。そういうきえると一緒に芝居をやってるときに感じる独特の緊張感が私にはあるんだよねえ。

藤長 お芝居をやっていて、きえるちゃんの目をのぞき込むようなシーンがあったんですけども、その中できえるちゃんの目は凄く不思議な目をしてるんですね。真っ黒で吸い込まれそうな目をしているんですよ。一度お客様も(舞台を見に来た時に)覗いて欲しいんですけれども…、目を…。本当に宇宙が見えますよ。

─ 宇宙!

藤長 その宇宙に立ち向かうではないけど、相対する(私の)宇宙を見せられたらいいな・って、思ってます。


↑ タイトルは「私の宇宙」かも?

◆ 川沿いや道路沿いをずうっとまっすぐ歩くのが好き

─ ところで最近のマイブームは?

藤長 ブーム?

─ 芝居以外で。あ、いや、芝居がブームっておかしいね(笑)。

藤長 うーん、歩くことですかね。でもこれはブームと言うよりはずっと趣味なんですが。

─ 趣味が「歩く」? 生粋の方向音痴で知られる藤長さんが…

藤長 ふふふふふ。あら猫だ。可愛い。(インタビュー中に道ばたの猫に気を取られてしまう)

─ ・・・・・。



藤長 (猫を見終わってから)川沿いとか道路沿いをずううううっとまっすぐ歩くのが好きで。芝居以外のと言われたけれど、歩きながらだと台詞も覚えやすいんですよ。しかも住んでいるところが田舎なので、台詞喋っても周りに人があんまりいないから気付かれない。あ、でも、自転車が来たら、ちょっとトーンダウンして・・・。

─ 藤長さんは台詞を覚えるのが早いですよね。

藤長 そうかなあ? 今回は苦戦してます。

─ いやでも、早いよ。もしかしたらそれは散歩のお陰もあるかも知れないよね。じゃあこれを読んで下さった役者の皆さんは是非やってみて下さい、ということで…。 その際自転車が来たらトーンダウンをお願いします。

◆ 「ろうそくの炎」

─ 前回インタビューのきえるの記事の中で「藤長さんがご飯を食べながら半目になっている」と密告がありましたけれど、そちらについては何かコメントございますか。反対弁論とか。

藤長 私眠気に弱いところがあってですね…

─ あ、認めるんですね。

藤長 食べていることとか、体とか、そう言う部分は(ご飯を食べているときでも)集中しているんだけど、どうしてもまぶただけは半開きになってしまいます。

─ 藤長さんは以前「オセロ」の稽古中にビニールテープで眉毛を書かれてからというものお顔に関する事件が多いですね。いや、私がイジっているからなんだけどね。ちなみにこのブログにその時の眉毛の写真を載せたりとか…は…

藤長 いやです。

─ あああ、ごめんなさい。もしかしてずっとイヤだった?

藤長 ・・・ちょっとイヤ。

─ ごめんなさい! もうしませんから。

藤長 でもその不快感が徐々に快感になってきている。

─ !!?
 じゃあ、応援して下さるお客様に最後に一言お願いします。

藤長 ろうそくの炎が灯るように、します。

─ ろうそくっていうのは?

藤長 こころです。


「こころです!」(イヤだと仰っていたのでイメージ図にしました)



─ 藤長さん、ありがとうございました。次回のインタビューもお楽しみに。



獣の仕業第九回公演

「ヴェニスの商人」[Kingdom Come]
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会場:pit北/区域(最寄り駅:JR京浜東北線、東京メトロ南北線「王子」駅)
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2014年11月
1日(土)14:00/19:00
2日(日)14:00/19:00
3日(祝)13:00/18:00

※ 11月3日のみ各開演時間が一時間早いのでご注意下さい。
※ 上演時間は80~85分を予定しております。

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