「空騒ぎ」という物語に寄せて 次回公演 2014年08月06日 0 ご来場ありがとうございました。立夏です。上演後記は小林さんにお任せしてしまいましたが、改めましてご来場・ご声援頂いたすべての皆様に深く感謝申し上げます。今までの獣の仕業で最大動員となりまして、皆様お暑い中お越しくださり誠にありがとうございます。この記事では上演後記に代えて、「空騒ぎ」を上演するに至った作家立夏個人の経緯のようなものを書いてみようと思います。演出側のことはここでは書きませんので悪しからずです。今回は獣の仕業初の「喜劇」の挑戦となりました。この辺りは前々回の小林さんの「上演後記」が更に展開しています。よろしければ。特に、旗揚げから第三回までは私はひたすら、どれだけ悲惨になれるか・どれだけ哀しい風景を創造できるか を考えていました。物語はすべて私の作り上げた悲しい気持ちだけで編まれていました。なぜ心境が変わったのかは「空騒ぎ」後記から外れてしまうので割愛しますが、その時私は「フィクション」を書くことをやめてみようと思いました。見栄を張らず、誇張せず、できないことも・できたことも・分からないこともそのままにしよう、私は、無意識にフィクションの力を用いて昔に出来た傷口を引っかき回してどうにか治さないようにしていました。それだけが罪滅ぼしだと思っていたからです。そしてやがて、傷口は治すべきだと思いました。舞台を、化膿した傷を見せびらかす場所にしかねない行為はやめようと。(決してそういったエンジンで書かれる作品自体は否定しません。現在の私がそれを選択しないというだけです)悲しみに打ち拉がれたり、怒りに我を忘れたり、絶望のあまり身を投げたり、そういったものが物語の底辺を支配していなくても、今なら心震わせるものが出来るんじゃないか─2年ほど前から薄々思っていたけれど「まだ早い」「それは今じゃない」と踏み切れないでいました。ですから今回の「空騒ぎ」で書かれたたくさんの恋の詩、役者たちが見せてくれた歓喜の涙、そして太陽のような笑顔─ それらは私個人に関して言えば念願の治癒であり、団体としては数年前から辿り着きたかったひとつのゴールです。ここから先、獣の仕業はまた新しい境地を探していこうと思います。※「ゴール」とは書きましたが、獣の仕業は今後喜劇専門劇団に路線変更する予定も、かといって「空騒ぎ」をイレギュラ公演にするつもりもありません。「前と同じ感じの公演は打たない」がモットーの獣の仕業です。空騒ぎの物語の中で、登場人物たちもたくさんの傷を負いました。悲劇が傷が付いていく過程の物語であるならば、喜劇はその傷を治していく過程の物語です。多さ深さは違えど、傷のない人間は、恐らくいないでしょう。傷付けた事のない人も、傷付けられた事のない人も恐らく。もし「空騒ぎ」を観て下さった皆様に、最後空に向かって手を伸ばしていた彼らのハッピーエンドが少しでも勇気を与えることができていたら、これ以上はありません。(もしくは「笑ってるのが一番だね」とかでもいいです)それでは改めましてすべての方に感謝を。次回は11月pit北/区域でお会いしましょう。立夏 PR