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獣の仕業のしわざ

劇団獣の仕業のブログです。 日々の思うこと、 稽古場日誌など。

戯れ

こんにちは。小林です。

大変にご無沙汰しております。季節はすっかり冬に向かい、いよいよ夏の暑さが恋しくなって参りました。
どちらかというと、私は冬の方が好きだと白状いたします。自分の誕生日が冬であるから、という理由もありますが、これ以外に理論的に「そうだ」と言える事実があります。

「夏は全裸でも暑い」ということです。
衣服が体温調整をするためのものであるのに対し、夏はこの人間の利器を易々と乗り越えるほどに狂暴です。そう、全裸でも暑い。だから夏より冬が好き、という訳ですね。

しかし昨今、私は冬の弱点を知ってしまいました。それは、

「外にいて寒くなったら地獄」だということです。
家から着てきた以上の寒波が突然やってきたときには、人はなす術もなく「さむーい」と言って、ポケットに手を突っ込み、首をすぼめて歩く以外になくなります。その、腕がピーンとまっすぐになった姿、まさにラピュタのロボット兵、もしくは石ノ森作の「リュウの道」に出るアイザックでございます。よく分からぬ例えかも知れません、ごめんなさい!!
果たして、私は夏には冬がいいと言い、夏には冬がいいと言う凡人なんですね。
獣のように体毛が濃くなればいいのにと願わざるを得ません。けほん。

さて、昨今わたしが気になっている言葉があります。
というより、以前より興味深く思っている言葉です。それは、

「面倒ださらっちまえ」です。

個人的に、物凄く矛盾した言葉のように思えてなりません。
さらうのは、絶対に面倒です。面倒以外の何物でもありません。

なのに「面倒<さらう」という方程式が、時代劇ではよく成立します。
その日本文化たるや、日本人でよかったなあと思う次第です。

四季もある日本、そんな日本に来てみませんか?
僕と握手しましょう。


そんなわけで、戯曲を以下に書いてみます。
世に言う「脚本」ではありません。

ただの戯れです。劇団の活動とは大きくカーブするような、外れた戯れです。
「面倒ださらっちまえ」に端を発した次第でございます。


*************************************************
山中を急ぐ娘。その娘を見つけた野武士2名
野2「おい!」
娘「きゃー」
野1「騒ぐんじゃねえ!銭だ、おい銭出しな!」
娘「銭なんて持っておりゃあしません。本当にこれっぽっちも」
野2「嘘をつくんじゃねえ、なんだその包みは!それを寄越せ!やいやいやい!」
娘「いやいやいや!こいつだきゃあお渡しできません。父が丹念を込めて作った番傘です。その丹精を銭に変えるのがあたしの生業なんです、これができなきゃあ、あたしら家族は野垂れ死んぢまいやす。」
野1「銭はねえのかよい!?」
野2「兄貴、銭より、見てみなさいよあの女の締まった体。こりゃあ、もういっそのこと」
野1「バカ!今は兎にも角にも銭だろ!」
野2「そうは言いますがね、都でもあんないい女は滅多に…あっ!あ兄貴、い、いねえ!女がいねえ!」
野1「あ!あの阿婆擦れ!舐めた真似しやがって!バカ、とっとと捕まえにいくんだよ!」
野2「へ、へえ!」

山中を逃げる娘。野武士ども必死に追いかける。
娘、足を滑らせる。

娘「ああ!」
野2「へっへっへ」
野1「往生せえ」

そこにふらっと登場。侍。

娘「堪忍してけろ…お、お侍さん!」
野1「なんだお前は!やっちまえ!」
野2「へ、へえ!」
カキンカキン!ドドドドドドドド!ペン!
野1「か、敵わねえ」
野2「お、おやぶん!」
野1「ま、待て、待て待て待て!」
侍「ぎょうにんべんをひと千切り、人の契り待てども侍になりしか」
娘「…?(´・ω・`)」
野「お、覚えてやがれー!」
侍「むう。」
娘「お侍さん、危ないところをありがとうございました。」
侍「気を付けて行くが良い。」
娘「…」
侍「行けよ!…行かぬか、ならばこちらが行こう。さらば。」
娘「あ、あの、お名前を!」
侍「名乗るほどのものじゃあございません。」

娘、侍をいつまでも見送っている。
場は変わり、娘の家。父が風呂に入っている。

娘「父ちゃん、湯加減はどうだい?」
父「あっついくれえだ。いいなあ。ああ、ダメだ。口の中にまだ米の味が残ってら。」
娘「父ちゃんが番傘つくってくれたお陰だよぉ。」
父「いいや、娘が売ってくれたからだな」
娘「なに言ってんだい、じゃああたし薪を取ってくるね」
野2「あ、兄貴!女が出てきましたぜ!」
野1「あいつのせいで、俺たちゃああの後、谷を転がり落ちるわ、熊に追いかけられるわ、子供に石を投げられるわで散々な目にあったんだ!」
野2「兄貴、またいなくなっちまう!」
野1「バカ!さっさと行くんだよ!」
娘「きゃー」
野2「てめえ騒ぐんじゃねえ!」
野1「面倒ださらっちまえ!」
父「娘どうした!娘!娘!娘ええええええーー!!!」

全裸で見送ることしかできない父。
場は変わり、町。町人がうろつく。

父「娘、あっしの娘知りやしませんか!?」
町「きたねえな!おとといきやがれ!」ゲシッ!
父「あぁっ」
侍「大丈夫かい」
父「か、かたじけねえ!あんた、知らねえか、あっしの娘」
侍「娘?どうしたんだ」
父「さらわれちまった!あんとき風呂なんかに入らなければ、汚いままでいいと思わなかったから…!あれからすぐ方々探し回ったのに、いねえんだよ。むすめぇぇぇ。」
侍「風呂…それで裸なのかい、お前さん。」
父「そうさぁ。」
侍「その娘の特徴は?」
父「め、目がふたつで、鼻がひとつ、口は、どうだったかな。あ、あった!口がひとつ、確かにあった、間違いねえ!」
侍「なんと」
父「お、お侍さん知っているんでしか?あっしの娘を」
侍「ああ。心当たりがあるでござる。」
父「ほんまか!?」

場は変わっておしんの家みたいな廃屋。
娘が縄を巻かれている。付近で酒を飲む野武士ら。

野1「けふの酒は美味じゃのう。いずくんぞ。」
野2「あ、兄貴、それよかこいつどうするんでやんすか?」
野1「このブログの更新者はキャラの言葉使いを変えすぎるあっぱっぱー。」
野2「兄貴も変えられちまったでごずら。それよりも」
野1「ああそうだな、こいつを使ってよ、こないだの侍をおびき出してよ、叩いちゃうべ?」
野2「さっすがは兄貴!ハーバード行けますハーバードってなんですか!?」
野1「知らねえよ!これが役者のつれえところだな。おい!早速侍を連れてこい!」
野2「へ、へい!」
侍「それには及ばんぞ!」
野2「ひぃー!」
野1「出たなショッカー!」
父「娘、無事か!?」
娘「もごもご、もーごもごもごもごもぐもぐ!」
侍「娘、無駄に文字数を増やすな!黙ってみておれ!」
野1「やっちまえ!」
野2「いやあー!」

キンキン、カキン、ドュブ!

野2「ぎゃあ!」
野1「あぁ、夏候惇!…もうメチャクチャ!で、でりゃあ!」

カキンカキン、ピコピコ、プスンプスン、もふもふっ!ぴんぽーん!はーい、だぁれー?

野1「ぎゃあー!」
侍「安心せい、峰打ちじゃ。」
父「む、むすめー!」
娘「父ちゃん!…なんで裸?」
父「バカだなあ、父ちゃんは服を着なくたって、こうしてお前を見つけられたじゃないか。あいつらに例え斬られても、服を着られなくても、そんなこと恥ずかしいと微塵にも思わないんだ。娘を失うことの方が、はるかに恥ずかしくてやるせないんだべ。」
娘「父ちゃん…!」
侍「娘、父ちゃんを大切にな。」
去ろうとする侍
娘「あ、あの、どうかお名前を…」
侍「…」
娘「ここまでしてくださったんです、何卒」
侍「拙者の名は、」
父「名は、」
侍「寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末食う寝る処に住む処藪ら柑子の藪柑子パイポパイポ パイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助でござる。」
娘「…」
父「…」
侍「死ねないんだ。」
父「被害者、なのですね」
侍「死ぬための旅をしているのです。その途中、誰かを助けたとしてもバチは当たらぬ。」
娘「お侍さん…」
侍「名乗ったばかりではないか。本名で…」
娘「さよーならー!」
侍「目の前で言うな!」
父「ありがとーございましたー!」
侍「うるさい!お前もだ、裸!」

去ることを強要された侍。その背中を見送る父と娘。
落つる日、あの太陽のように命落とす日を求めて、「寿限無…」は西に向かって歩いていく。
負けるな「寿限…」、頑張れ「寿…」、明日に向かって走れ夜をヒッパレ、

「侍」!!


感動大作でしたね。
個人的に楽しかったのでもう大丈夫です(?)

それでは、皆様お体など崩されませぬようご自愛ください。
今日はここまででございます。ありがとうございました。


小林
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