「盗聴」[The Play]に寄せて~本当のこと あるいは悪意の結晶としての盗聴行為~ 次回公演 2017年02月01日 0 立夏です。 獣の仕業第十一回公演「盗聴」[The Play]は1月15日に終演いたしました。ご来場いただいた皆様、そしてご声援くださった皆様、ありがとうございました。心より御礼申し上げます。 今回の公演を無事に終えることができましたのは、皆様のお力添えのお陰だと思っております。 皆様、今回は「獣の仕業の新境地」と大風呂敷を拡げての公演でしたが、いかがでしたでしょうか。 公演直前に私はこちらのBlogにこんなようなことを書きました。 はっきりいってなかなか曲者で厄介な物語です。でも、私は、やっと、私の言葉で本当のことだけを書くことができたと思いました。 公演をご覧いただいた皆様には、この一文がちょっとした伏線であったことをご理解いただけるのかなと思います。「本当のこと」 つまり、獣の仕業が「本当のこと」を作るために選択したのは、徹底的に「Play」であることそして「嘘であること」です。 私はこの本でようやく、自分にとっての本当のことを書くことができたと思っています。それに嘘はありません。しかし、そのために私はこの本に本当のことをひとつも書きませんでした。 本当のことを書くことと、本当のことをひとつも書かないことは、実は同じことだったのだというのが、私の気付きでした。 とある王子様の言葉に「砂漠が美しいのはどこかに井戸を隠しているから」という有名な一節があります。だとすれば、盗聴は砂漠です。草一本生えない一面の砂。そこに井戸はあったのでしょうか、どこかに、私はそれを書かなかったので、分かりません。センチメンタリズムです。 それはそうと、ずっと演劇の稽古が大嫌いで今もまあまあ嫌いです。でも、同時に「稽古がずっと終わらなければいいのに」 と何度も思いました。これはどういうことでしょう。 嫌なことがずっと終わらなければいいのにと願うのはどんな気持ちなんでしょう。稽古どころか本番も終わってしまった今では、それもやはり分かりません。レトロスペクティブです。 今回の作品のお客様のご感想については「クズ」「ゲス」「登場人物の性格が悪すぎる」と言われる一方、「爽やかだ」「純愛だ」「純粋だ」とも言っていただきました。 でもいずれのお客様もそのお客様にとって正確で、それこそ「本当のこと」だと思います。 あるいは、あわよくばどちらのご意見のお客様も根っこは同じことを仰ってたりするのかな…と都合のいいことを考えたりもしますが、これも分かりません。 分からないことだらけです。 そんなお客様皆様の大変多岐に及んでいた感想についてはアンケートもSNSのご感想も、どれも嬉しく拝見いたしました。すべて今後の創作のエンジンにさせていただきたく存じます。あらゆるお言葉に感謝いたします。獣の仕業第十一回公演「盗聴」[The Play]Twitterご感想まとめ また、音響プランナーの阿部さん、照明プランナーの伊藤さんにも感謝いたします。音と光の姿はしているものの、おふたりは盗聴の出演者だと私は思っておりました。 それから、出演陣。誰がひとりでも欠けていたら、今回の盗聴は今の姿をしていないと思います。ありがとう。 ところで、盗聴は獣の仕業のオリジナル作品の中で、はじめての「人が死なない物語」でした。 誰も死なない話を書くこと。長年の私の目標でもありました。 ひとりも死なない、 みんな懲りないし、結構元気。 最後のダンスはそんな私達のしょーがない生命力、みたいなものです。 獣の仕業というフォーマットにおいて、このような作品が作れるようになったことについては「ようやく」という思いが本心です。「私たちには。私たちの言葉を使って、私たちの身体を使って、本当の話ができるときがようやくきたのだと思う」 これは、私が俳優たちに送った最初の「盗聴概要」のメールに書いてあった一文です。 さっき掘り起こして見てみて「まあまあ生意気なこと書いているな」と反省もしたのですが、私が生意気なのはいつものことですし、せっかくのことですから、気にしないことにしました。本当は少しだけ気にしています。 そんなことですから、これからも懲りずに元気に舞台表現をしていきたいと思います。少しでも楽しんでいただけるようにこれからも弛まず精進して参ります。 ですから…、皆様ももしよろしければ懲りずにこれからもご覧いただければ幸いです。 では、最後に。 いつか気が向いていただけるなら…、カトリエにとっての「盗聴」は、みなさまおひとりおひとりにとって何に置き換わるんだろうと考えてみていただけませんか? 盗聴という行為、悪意の結晶。 劇場に来てくださった皆様の中の心には、どんな行為結晶があるのでしょうか。 想像するだけで、私はワクワクしてしまいます。 それではまた、近いうちに…… 改めまして心より、お礼申し上げます。 もっと、Playを。 獣の仕業代表 立夏 拝 PR