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獣の仕業のしわざ

劇団獣の仕業のブログです。 日々の思うこと、 稽古場日誌など。

d-倉庫◎現代劇作家シリーズ5 J-P.サルトル「出口なし」フェスティバル 終演

獣の仕業「出口なし」上演写真

 立夏です。

 d-倉庫◎現代劇作家シリーズ5 J-P.サルトル「出口なし」フェスティバル無事に終幕致しました。
 ご来場頂いた皆様、ご声援・ご協力頂いた皆様、劇場・フェススタッフの皆様、共演くださった双身機関の皆様、獣の仕業スタッフ、キャスト… 多くの方に多大なご助力を頂きました。
 この場を借りて、深く御礼申し上げます。

 フェス・合同公演と言う形式で、今までお会いできなかった方や、色々な角度からのご意見を頂き、大変貴重な体験をさせて頂いたと思っております。
 御覧頂いた皆様に少しでも楽しんで頂ければ…。また「出口なし」の原作をこれをきっかけにお手に取って下さる方がいれば…私達にとってこれ以上の喜びはありません。
 皆様から頂いたご感想・ご指摘を旨に刻んで、これからも弛まず精進して参ります。



 今回の企画は、全10団体を5組に分け、2団体ずつの連続上演で「出口なし」だけを上演するというものでした。つまり、ご来場頂いたお客様は最低でも2本、別団体の同作品を御覧頂いたことになるわけです。作品を観る側にとっても、作る側にとっても、恐らく(殆どの方にとっては)特殊な体験だったのではないでしょうか(少なくとも「この短期間で」と言う注訳付きならば)

 「『観る』を問う, 『演る』を問う」

 これは今回のフェスティバルのキャッチコピーです。
 このキャッチコピーを見て自分が最初に感じたのは、「それは誰から誰への問いなのか」ということでした。
 問うているのは誰なのか。問われているのは誰なのか。

 それは「ご覧になって何を思いましたか?」 と言う制作側からの呼びかけかもしれません。あるいは「観る」と言うのはどんな行為なのだろう、と言う観客の皆様の中に湧き上がる疑問でしょうか。それとも「なぜ今出口なしなのか?」 と言う究明・・・、もしくは「演劇とは?」と言う命題でしょうか。
 あらゆる問い同士が、劇場に集い出会って行く。そんなたくさんの「?」が、この企画の源流に流れているように思いました。その流れの中で、最終的に「問いとは何であるか?」と言う気分だった私はさながら「『問い』を問う」状態でした。


 
 千秋楽の翌日となる昨日、各出演団体の演出家をパネラとして迎えてのシンポジウムが開催され、僭越ながら私も登壇させていただきました。
 そこでも数多くの問いが投げかけられました。
 演劇とは? 演出とは? サルトルとは? 出口なしとは? 地獄とは?「さあ, 続けようか」とは…?
 
 シンポジウムにご来場頂いた皆様のまなざしを感じながら、自分にとっての「演劇」「演出」「出口なし」をそれぞれの演出家がそれぞれの語り口で話していく様子…。
 結局開催時間は2時間強に及びこれがまさに地獄だと言わんばかりの深さと終わりのなさ! (最後に「さあ、続けるんだ」と言わなかったことを少しだけ後悔しております)。
 大変刺激的な体験でした。
 何より面白いと思ったのは、10団体が様々なやり方で創作しても、演出家がいくら話しても、やりつくせなかったこと、話しきれなかったことはまだまだ膨大にありそうだと言う気配! しかしもし何十年と「出口なし」フェスをやったとしても、全員が納得する絶対の答えは恐らく永久に現れないでしょう。

 ところで、出口がないと言うことは、答えがないと言うことにとても良く似ていると思います。

 しかし、それでもなお、皆さんが観たものは事実です。

 もしどうか答えがあるとすれば、今回のフェスをご覧になったお客様ひとりひとりの中に、その答えのようなものがあると思います。
 私達の作品がどのような様であったか、それは作品自身である私達の中にではなく、それを観てくださった皆様の中にあります。
 獣の作品に準えてしまうならば、作品の反射こそが作品そのものなのだと。

 皆さんが観たもの。それが答えです。
 その真実がどんな権威や、経歴や、経験を前にしても揺らがないことを私は望んでいます。仮に作品そのものがそれを否定することがあったとしても、「観客」の観たものだけが作品の答えであって欲しいと思っています。
 
 「演る」が問い、「観る」が問う。発言していく。そうして反射を繰り返し、たくさんの問いを浮かび上がらせていく。問いはまた新たな問いを生む。その問いが演劇の外にも伸びた時、私達の演劇はこれからも続いていけるのではないでしょうか。

 演劇について対話していくこと。その価値を改めて考え直して行きたいと思います。



 獣の仕業の次回公演は未定ですが、目標としては年内です。決まり次第こちらやHPで発表致します。
 それまでに自分の未熟さや至らなさも問うて行きたい次第です。

 最後に、フェスティバルに共に出品された団体に皆様の今後の更なるご発展をお祈りすると共に、このようなフェスを企画して下さり、素晴らしい機会を与えてくださったd-倉庫の皆様に、改めて心より感謝致します。

 希望と決意を込めて。
 立夏
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