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獣の仕業のしわざ

劇団獣の仕業のブログです。 日々の思うこと、 稽古場日誌など。

「群集と怪獣と選ばれなかった人生の為の歌」の街を歩く


「公園向かいの道沿いにはまっすぐに線路が渡り住宅街の間を抜けていく。」


 立夏です。
 夕方の、陽が落ちる直前の頃に時間が空いたので少し出掛けようと思いまして、小さい肩掛けだけ背負ってフラフラ当てもなく散歩しに行くことにしました。
 しばらく歩き続けると、空の色がみるみる変わっていきます。マジックアワーと呼ばれる、ちょうど夕方と夜の間の一瞬の時刻です。


この色合いの空、好きな方も大変多いのではないでしょうか。

 出掛けた時にこの空が目に留まっても、普段はいつも急いで劇場なんかに向かっていたりなんてことが多くて。でも今日は前述のとおり時間があったので写真を撮りました。
 私もこの昼と夜が混ざったグラデーションの空色がとても好きなのですが、獣の仕業第七回公演「群集と怪獣と選ばれなかった人生の為の歌」と言う作品でこのくらいの時間の風景を物語にしました。


 ” やがて街は夜と夕暮れの間の時刻になる。世界に魔法が掛かる時間。
 (中略)
 しんとした夜独特の魔法は、水を吸ってゼリー状になって、僅か開いた夕焼けの隙間から音も立てずに降り注ごうとしていた。"



 ああ、これは「群集」の時に書いた風景だなあと思い、そのまま思いつきで踏切を探すことにしました。踏切、そしてそこを通過する電車、このふたつは夕焼けやマジックアワーと同じく、「群集」の重要なモチーフでした。
 踏切、ありました。(そもそも沿線を歩いていたのでそんなに探し回っていません)



 ”公園向かいの道沿いにはまっすぐに線路が渡り住宅街の間を抜けていく。”



 " 線路の消失点から均等に並んだ踏切が、こちらに向かって順ぐりに遮断機を下ろしていく。”

 

 " 電車が通過する。かん・かん・かん・かん ・・・ ”

 ここはちょうど「群集」の舞台にほど近い街。作品の中に登場するモチーフが街の中に溢れていました。


 そのまま線路沿いにフラフラと歩いて行きます。歩きながら写真を撮って回るのは初めてなので何を撮ったらいいか分かりません。ただとにかく目に留まったモノを切り取っていきました。
 線路沿いに打ち捨てられたビニール傘、そびえ立つ真っ黒な建物。
 撮った写真を眺めていると、そういえば私もこういうその時目に留まったモノで「群集」を書いていたな、と思い出しました。
 何故か目に留まる、私の視界に入る、周りに溢れている沢山のモノから、私がそれを選択する、理由が分かる前に、とにかくそれを描写する… そういう自意識をキッカケにして書かれたのが「群集」です。


嵐に打ち捨てられたビニール傘ぜったいきみのものにならない


帰り道あの日の少女が振り返る「先に行ってて」「お願い」「待って」


これはチョークだろうか?


みらいをささえる


たまによく分からないものも撮ってしまう

 そんなことをしている内にだんだん陽も落ちてきたのでじゃあ電車で帰りますか~と言う次第(陽が落ちた街を歩くのがあまり好みではないのです)。
 家に帰ってから撮った写真を眺めつつ、そういえばちょうど一年前だったなと思い出しました。「群集と怪獣と選ばれなかった人生の為の歌」の上演日です。今日は思い出してばかりです。

 どうせならもっともっと遠出してタイヤの怪獣の公園まで行っても良かったかなと少し後悔しながら本日オシマイとさせていただきます。

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