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獣の仕業のしわざ

劇団獣の仕業のブログです。 日々の思うこと、 稽古場日誌など。

獣の仕業第八回公演「空騒ぎ」上演前のご挨拶2



獣の仕業第八回公演の演出ノートに書いたことについて
もう少し丁寧に、この場を借りて書いてみようと思います。

「喜劇」をやるということ。
そして私たち獣の仕業が「喜劇」をやると言う事について。

「空騒ぎ」はシェイクスピアの喜劇です。
日本だと「恋のから騒ぎ」も有名ですが、このタイトルはシェイクスピアの空騒ぎのパロディです。
いきなり余談ですが「空騒ぎ」の原題は"Much Ado About Nothing"
そして「恋のから騒ぎ」のサブタイトルは"Much Ado About Love"です。いいですね。


皆さんは喜劇と言うとどんなものを想像するでしょうか?

吉本新喜劇のようなボケとツッコミのあるコントに近いものでしょうか、
それともチャップリンやミスタービーンのようなひょうきんな動きや表情があるものでしょうか?
もしくは三谷映画のようなすべての伏線がオチに向けて収束していくようなシチュエーションコメディでしょうか?

来月上演する獣の仕業の空騒ぎはそのどれとも違うような形を目指しています。

「喜劇と悲劇はコインの裏表」
これは今回のチラシや公演情報の末尾に添えさせて頂いた言葉です。
ふたつは表裏一体で双子の様に似ている部分もあれば、火と水の様に正反対の部分もある、
そんな、ふたつでひとつのものだと私は思っています。


以前上演した「オセロ」[Othello the Sharkespeare]は「悲劇」でした。

妻の不貞への嫉妬に苦しみ喘くオセロ、
夫の怒りに触れて力なく涙する鞆音、
二人の悲しみに触れてもなお破壊していく夜光、
物語は悲しみ、怒り、苦しみで溢れ、束の間見えたような喜びの兆しも悪知恵の前にして蕾のまま消えていきました。
ですがそこには同時に、悪意に必死に立ち向かう人間のもがき抗う「生」の力がありました。

今回の空騒ぎと言う「喜劇」でも私達はその必死な「生」を舞台上に立ち上げたいのです。
「生」の力、人間の力、それはこの世界のあらゆる理不尽さや悪意から、自分の大切なもの守る為に戦う力です。


あなたの大切なものはなんですか?

あなたが守り・戦う力を持てるものはなんですか?


それは決して、日本の運命とか地球の行く末じゃなくていい、
家族、友達、会社、月のお給料、自分のポリシー、ペット、道端に咲いている小さな花、十人十色のはずです。
私達は何かの為に毎日自分を懸けて戦っています。全員が誰かにとってのスーパースターです。

「空騒ぎ」の登場人物は恋や夢に生きています。
恋にまつわるときめきや喜び、そして退屈や胸の痛みについて。
「あの子は俺の事が好きだろうか?」
「あの人が私の事を愛している?」
と、それはもう必死にです。その必死さは悲劇でも喜劇でも変わりません。

ですから私たちの空騒ぎは「オセロ」や前回公演「群集~」以上の熱量を目指しています。
お客様各位におかれましても、今まで同様の緊張感をお願いすることになるはずです。
どうぞリラックスせず、ドキドキしながら見に来てください。

ただし登場人物達の「必死な姿」が、今までのような眉間に悲しみや苦しみに満ちたものばかりでないことも事実です。
必死な笑顔!必死な喜び!傍から見ると(もしかしたら)それが滑稽に映るかも?しれません。
その辺りは新しい獣の仕業として楽しみにお待ちいただければ幸いです。


最後に。
「悲劇」と「喜劇」には明確な違いがあります。

それは「エンディング」です。

いわずもがな、悲劇はアンハッピーエンド、そして、喜劇はハッピーエンドです。

シェイクスピアの「空騒ぎ」は喜劇です。
そして上演は、原本に忠実にハッピーエンドです。アンハッピーエンドへのアレンジはしておりません。
今迄上演してきた悲劇作品の中で儚く散って行った蕾のままの喜びが、ようやく花咲く事をお約束します。


その花がどんな風に咲くのか、どんな色のどんな形の花なのかは、まだ秘密です。
劇場に訪れた方にだけそっと耳打ちするような気持ちで、上演作品に代えさせて頂きたいと思います。

あなたのご来場を、キャスト・スタッフ一同、心よりお待ちしております。



獣の仕業第八回公演
「空騒ぎ」

The Act of Beast 8th Stage [Much Ado About Nothing!]

日時:2014年7月19日(土),20日(日)
19日(土)15:30/19:30
20日(日)13:30/16:30

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