「群集と怪獣と選ばれなかった人生の為の歌」に寄せて 次回公演 2013年10月06日 0 こんにちは。立夏です。 獣の仕業第七回公演「群集と怪獣と選ばれなかった人生の為の歌」が先週9月29日に無事千秋楽を迎えました。 お陰様で土曜日もほぼ満員、日曜日はマチネ・ソワレはどちらも完売となりました。ひとえにお客様一人一人のおかげと思っております。 また満席の為席間などご不便をおかけしたことも多いと思います。キャンセル待ち多大なご協力をいただきましたこと、この場を借りて改めて御礼申し上げます。 それではご挨拶に代えて、今回の上演に至るまでの話を書かせていただきます。 各所で何度も申し上げていてだんだん自分でもくどくなって参りましたが今回の作品は獣の仕業の旗揚げ公演の再演です。 私たちは2008年の時に獣の仕業を旗揚げしました。今から五年前です。初演の際には大学卒業したての年齢から高校生の年齢を振り替えって「今から七年前」と言う台詞があるのですが、再演の今回では「今から五年前」に改訂しました。これは今の私たちから旗揚げをした時の自分たちを振り返った時の年数です(この変更は個人的なこだわりで脚本のストーリーには何の影響もありませんが、初演の時より再演の時の方が若いということになるのですかね?) 今回の再演に当たって当時の戯曲を読み返しました。 当時はもちろん最高傑作で書いておりましたが今読み返しますと書きたいこと以外のことがずいぶんたくさん書かれているような気がしました。 そして今でも思い出すことがあります。群集の再演が決まった時私は藤長さんに「話したいことがある」と言われました。そしてある喫茶店に行きました。彼女は初演時の脚本を広げてあるページを指さしました。 「立夏さんが書かなきゃいけないのは、ここなんじゃないかと思う」 それは初演でも再演でも彼女が演じた主役の「麻生ふるえ」が物語のクライマックスで語るあるセリフの部分でした。--- けれど、私は、言葉を、デモをやるための言葉を持っていなかった。それは私の中に言葉が足りないのか、それとも本当はこの街を守りたいなんて、それは嘘なのかもしれない。 私は、何かを言わなくちゃと思ってた、誰にでもいいから、なんでもいいから、今言葉にしなけりゃ失ってしまうものを守る為に。だからみんなを集めたんだ、 でもそれは、きっとこの街そのものじゃない、きっと、いや、必ずそうなんだ。 私が本当に守りたかったものは、伝えたいものは、デモで、一言で言えてしまうような、一言で伝わってしまうような名前のあるものじゃない、街が変わることによって私の中に生まれてしまった私の中の不整合を…違う、それも違う、この街の景色が変わっていく…私のすべてはその景色の中にあるのに、変わってしまったらなにかを思い出せなくなることが、忘れてしまう事を許さない景色が、崩れていく事が…、 (初演「群集と怪獣と選ばれなかった人生の為の歌」より抜粋--- 「書かなければいけないのは、ここだと思う」もう一度彼女は言いました。「本当はここを立夏さんはもっと、書きたいんじゃないかって」 思えば今でこそ私の脚本に対してしっかりとしたアドバイスをくれる藤長さんですが、彼女が脚本に関して何かを告げてくれるのはそのときのそれが初めてだったのではないかと思います。それだけ、初演の主演を演じたことも手伝ってそして何より自分たちの始めの作品に対しての思い入れが伝わってきたのでした。 私も思いました。「確かにここは当時書ききれなかった部分なのかも知れない」当時は気が付いていなかったのですが、この台詞は脚本家としての私の敗北のようにも見えました。役柄がまるで考えることを放棄しているようにもとれる台詞でした。 再演とは何でしょうか。もう一度同じ作品を見たいと言う観客の期待に応えること。それも大事な使命です。ですから、結構、悩みました。しかし当時のわたしたちよりももっと素晴らしいものが見せられるのであれば、再現性はなくても構わないかも知れない。今大事なのはストーリーよりもあの街に住んでいた彼らの気持ちを当時よりも鮮やかに徹底的に書ききること。私は団員達に言いました。「全部書き直すことになると思う。ストーリーも変わると思う。だから、もし読んでみて、それが再演に見えなければ、そういってくれて構わないです」と。 結果的にできた物語はその通り初演とはだいぶ異なるものになりました。関係性や肩書きもラストの種明かしの部分も違っています。ただ彼らの心と「街に落ちる夕日」「夜の底の月」は同じです。五年前の気持ちのように書きました。当時は気づかず書いていた自分の嫌なところとか図々しい部分もそのまま書いたのでまあ随分気恥ずかしい気持ちと闘いながらの執筆でしたが…。そんな自分が五年で居なくなるわけもないので、余計に辛いですね。そして初演時の台詞も初演の時のはまた違った味わいで・実は・結構残っています(これは初演を見て下さった方と私達の秘密の楽しみと言うことですね) それから手前味噌ですが初演の時にやりたくでできなかったギャップを五年経った役者達が見事に埋めてくれた印象です。いつも一緒に居るのでなかなか気付きにくかったので本当に申し訳ないですが、本当にソレは、思いました。 やっとここまできました。観客の皆様、それから携わってきて下さった沢山の人達に導かれて。 もしかしたらあの物語は五年間わたしたちのことをずっと待っていたのかなという気持ちです。 今はとても前向きな気持ちで、さあ、これからどこにいこう、ということを考えています。 獣の仕業の2013年の公演はこの「群集と怪獣と選ばれなかった人生の為」が最後です。次回の公演は来年の…未定です。いつも公演が終わらないと次のことを考えられないのがサガです。 ただ公演は来年までありませんが、ちょっと色々と水面下でゴニョゴニョしております。まだお知らせは出来ませんが、もしかすると今年中にふいにしょっこりと・こちらで何かお知らせできるかも知れません。なかなか歩みののろい私達ですが、これからも末永く見守って頂ければ幸いです。 それでは、この度はご来場頂いた皆様・ご声援下さった皆様、誠にありがとうございました。 またお会いしましょう! PR